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最高裁判所第二小法廷 昭和48年(オ)494号 判決 1973年10月05日

上告人

阪本常太郎

右訴訟代理人

大友要助

外一名

被上告人

永田亀吉

右訴訟代理人

原山剛三

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人大友要助の上告理由第一、二点について。

原審の適法に確定した事実関係のもとにおける所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決(その引用する第一審判決を含む。)に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

同第三点について。

抵当権の設定されている建物を買い受け引渡を受けた買主が、その後抵当権の実行により右建物を競落した競落人にその所有権を対抗できないことを知りながら不法に占有中、右建物につき費用を支出したとしても、買主は、民法二九五条二項の類推適用により、右費用償還請求権に基づき建物の留置権を主張することはできないと解すべきである。ところで、原審の適法に確定した事実によると、上告人は、抵当権の設定されていた本件土地建物を買い受け占有していたところ、抵当権の実行により右物件を競落した被上告人から本訴を提起されてその明渡しを求められ、同人に対しては右売買による所有権取得をもつて対抗できないため不法占有となることを知りながら、その後本件建物を修理、改造したものである。そうすると、前判示に照らし、上告人の留置権の主張は理由がなく、これを斥けた原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(小川信雄 岡原昌男 大塚喜一郎 吉田豊)

<上告理由省略>

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